はじめに No.6 ――進路は自分の内に秘められている――
今の若い人は不思議なくらい見た感じが良く似ている。仲間で同じようなかっこーをするからか。一人ひとり見ると個性的なようであるけども、集団として眺めれば、それぞれの個性は残念ながら見えてこない。目立っているようで目立たない。つまり、姿にしても話題にしても自分の中から湧き出てきたものでなく、外から、つまりメディアからの影響で知った借り物で知識が構築されていないかと思うのだ。仲間が集まると、まず借り物のファッションで出会い、メディアで知った借り物の話題で話をする。借り物で作り上げられた個性は薄っぺらい。平面的で溢れる迫力が弱い。
言い換えるならば、若者だけでなく私たちも熟年者も現代のマスメディアの波に翻弄されたボートピープルのような側面がある。
どうせ時代の波には乗らなければいけないのだから、サーファーのように自分で上手く波をコントロールし、どこかはっきりした目的に向かっているという夢と希望を持った若者の力強い姿を見たいと思う。
10年先に自分はこうありたいとか、こんな人になっていたいというヴィジョン(将来像)を持っている若者はいきいきしている。夢があるからだ。唯心所現、心で想うことは形になって現れてくるという仏教の言葉である。願わなければ現れてこない、イメージ(想像)しなければ自分の将来は見えてこない。それを今風の仕事だからでなく、まずは自分のこれまでの生きざま振り返ってほしい。自分の家族や身の回りを見つめ直してほしい。自分が歩んで来た道をしっかり思い出し、掘り起こしてほしい。今君が18歳なら、18年、6570日間あまりの経験は軽くない。日ごと一日の積み重ねの中に必ず自分の進路を実感する何か芽のような、ヒントになるきっかけを発見できるのではないかと思う。
建築・インテリアの仕事のような、空間やモノを創り出す仕事は面白いが難しい。この世界がどんな分野なのかをしっかり見つめて、感じて欲しいと思う。そんな願いを込めて私が歩んできた30年の建築の体験や想いを綴ってみたい。このブログが読者の進路の縁(よすが)になり、この道を志す青年たちが出てきてくれたらと願って止まないし、この仕事の使命とやりがいは人を幸せにする仕事であると信じて、今なおこの世界を歩み続けている。少し乱暴かもしれないが、難しさとかしんどさは何を志してもついてくるものだ。後でじっくり味わったらいいと思っている。それより何より、それらの立ちはだかった壁が体験や経験として、どれほどこれからの人生で貴重なことか。大切なことは、志しを立てたら本気で飛び込む勇気をもつことではないだろうか。人それぞれの若さには自分の夢を実現できる能力と、壁を乗り切る体力が必ず備わっている。若い人が本気になった時の凄さにこれまで何度驚かされてきたことか。
夢を喰って生きていって欲しいと思う。お腹は満腹にはならないが、心が夢で一杯になる。力がつけば自然と収入も増えてくる。今の時代、若い人たちがこんな充実感や満足感、精神的な満腹感や達成感を、なかなか味合うことができない世の中になっているのではないだろうか。これを読んでくれている君も、今、夢探しで不安で生きていないか?
前置きが長くなった。さあ、次回から私の建築の話を始めよう!