建築を志す前に読む本(ウェブバージョン)/第1章(No.15)

NO.15 ――小さな人間の偉大な想像力――

 ライトの建築を見て廻るという今回の旅行で、日本の国土の広さの25倍というアメリカの大地の広さをいやという程思い知らされた。水平線まで真直ぐに伸びた果てしない道。約600キロ走っても信号に出くわさない広大さ。この広さの中で知った小さい自分、人間の小ささ。しかし、ライトの第1作目から遺作になったニューヨークのグッゲンハイム美術館まで、今回訪ねた95のライト作品には、それぞれに一篇のドラマを感じさせられた。この旅行でライトが何を考え、何を思い、何を願って建築を通し人生突っ走って行ったのか、ライトの生き様、人生の熱さや吐息までもを感じた今回のアメリカツアだった。 モノを創り出す事は無から有を生み出すこと。生み出されたものを見る人はどう感じてくれるのか。 短い日程でこれだけの作品を見て廻ると、作品のみならず人としてのライトの生き様が立体として浮かび上がってくる。サイモンとガーファンクルのアルバムに「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」がある。この二人、ハーバードで建築を専攻していたそうだ。

 2時間の落水荘の見学ツアーを見終えて、最後の作品を終えたという充実感。2時間も言葉が通じないプレイルームで待ってくれた子どもたち。迎えに行くと心細かったのか、泣きながら胸に飛び込んできた子供たちを抱き上げながら今回のライト見学ツアの予定を終えた。子供たちが無事であった安堵感を感じながら、生前のライト、どんな人だったのかなと思いを馳せてみた。 きっと人を喜ばせることの達人であり、優しさと懐の深さを兼ね備えた粋な人だったのだろうなと思った。

建築を志す前に読む本(ウェブバージョン)/第1章(No.14)

NO.14  ――人生掛けたライト起死回生の作品、落水荘――


  この建築は暗黒と波乱と不遇の25年間を糧に不死鳥の如く、息を吹き返したライト69歳の作品である。しかも、ライト第2期黄金時代の幕開けとなった作品でもある。この作品から92歳で他界するまで、堰を切ったように精力的に創作活動が続けられていく。その生涯で具現化した作品437件。計画案を含めると800を超えるという。およそ一人の人間の仕事量をはるかに超越している。

 ライトの作品にはあまり理屈が感じられない。あるのは空間のドラマ性と居心地の良さだ。ライトの作品は写真では判りにくい。空間が味わい深く変化に富んで複雑だからだ。日本では、明治村の旧帝国ホテルの復元されたエントランスロビー。関西では阪急芦屋川にある旧山邑邸あたりが、ライトの空間を味わうことの出来る代表的な作品だろうか。是非、訪ねて空間体験して欲しい。

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