NO.19 ――出会うこととは?――
人生、出会いの連続だ。建築の仕事もまた出会いによって仕事が生まれ、
さまざまな出来事がふつふつと沸き上がってくる。モノづくりの仕事は発注者がいて成り立っていく。注文が無ければモノはつくられていかない。クライアント
が仕事を依頼し、設計者はそれに応えていく。仕事は人と人との出会いの産物。モノの誕生はここから始まる。その方はどんな方なのか、どんな趣味なのか、ど
んな家族を持っているのか、どんな夢を持っているか等など。
様々な不安と期待が入り混じりながらクライアントと出会っていく。設
計を始めた若い頃、私は本当にさまざまな人生の師になるような方々をクライアントとして出会ってきた。これは私の生涯の財産である。どれだけ元気を貰った
ことか。――なぜ、今、この方と出会ったのか?――。自分がこの方に出来ることは何か?人と出会うことは一体どういうことなのか。新たな仕事の依頼等で紹
介されたり、出会ったときにいつもそう考えさせられた。
出会いに応えること。応えるとはレスポンス。レスポンシビリティ、これは応えること、名詞である。この名詞を英和辞書で調べると責任と
いう言葉が出てくる。つまり、出会いに応えるということはその出会いに責任を持つということなのか。モノづくりは最初にモノはない。つまり、見えないもの
にお互い信頼しあってクライアントはお金を、設計者はアイデアを、建設会社は材料と現場力を出し合ってモノを造りだしていくのである。