No.11 ――ライト作品の見学記――
ライトの作品を見学するためにアメリカまで旅行。それも家族でひと月。費用は18年前で約200万円。決して安くないが自分自身への投資である。何かを志すと、人は思い切ったことが出来るものだと思う。子育てしながらのこの費用の出費は痛いが、動くためには常にリスクが伴う。有意義な旅行にするために下調べ無しにシカゴへ渡ったわけではない。見学したい作品の候補を上げ、場所を念入りに調べる。すぐ壁にぶつかった。たとえば、雑誌には落水荘はペンシルバニア州、ミルラン。この程度しか位置は示されない。これは近畿地方、奈良県と同じ。これでは目的地に到着できるはずがない。ましてや広いアメリカの大地の中で・・・。建物を探し出すには住居表示、何丁目何番までの住居表示が必要なのだ。
非常に困ったが出発の日が迫ってきている。一応、作品90件の候補は決まったが・・・。幸いシカゴにコネがあった。日本人で大手製鋼会社の現地エージェントの仕事をしている。
ライトが結婚後すぐ住み、そして20数件の住宅を中心に、作品を残したオークパークの近くに彼は住んでいた。これは有り難かったし、この旅行のキーマンになってくれた。オークパーク以外の残り約70件の所在地が判らず、不安を持ちながらもシカゴへ飛んだ。はっきり言って無茶である。しかし、行けば何とかなる。おまけに飛行機の座席が狭いとこどもがぐじるといけないのでビジネスクラスにした。季節的に運賃はエコノミーの約3倍。旅費は高いわ、ろくに作品も見学できなかったらどうしょう?と、不安ながらも、さあアメリカへ向けてテークオフ。