NO.14 ――人生掛けたライト起死回生の作品、落水荘――
この建築は暗黒と波乱と不遇の25年間を糧に不死鳥の如く、息を吹き返したライト69歳の作品である。しかも、ライト第2期黄金時代の幕開けとなった作品でもある。この作品から92歳で他界するまで、堰を切ったように精力的に創作活動が続けられていく。その生涯で具現化した作品437件。計画案を含めると800を超えるという。およそ一人の人間の仕事量をはるかに超越している。
ライトの作品にはあまり理屈が感じられない。あるのは空間のドラマ性と居心地の良さだ。ライトの作品は写真では判りにくい。空間が味わい深く変化に富んで複雑だからだ。日本では、明治村の旧帝国ホテルの復元されたエントランスロビー。関西では阪急芦屋川にある旧山邑邸あたりが、ライトの空間を味わうことの出来る代表的な作品だろうか。是非、訪ねて空間体験して欲しい。