No.9 ――いざアメリカ、シカゴへ――
ライト作品の空間のドラマ性は学生時代から好きで、雑誌は食い入るように見たし、ライト関係の本もずいぶんと読んだ。また、写真を見ながら何枚もスケッチもした。しかし、残念なことにアメリカ本土での作品を見たのは、ニューヨークの五番街にあるライトの遺作になったグッゲンハイムの美術館だけだった。町内一番を目指している私にすれば実物を見、ライトをしっかりと知る必要がある。実際に見てみたいとかながね願っていたこともあって、とうとうその機会が巡ってきた。
計画を始めなければいけないその年の夏、着手する前にひと月かけてライトの作品見学の為にアメリカに飛んだ。目的はできる限り多くライトの実際の作品に触れ、ライトの空間を実体験する事。喧嘩する前に人と成りを知ろうということだ。
妻と、5歳と3歳の息子たちを連れ、家族でのライトの見学旅行だ。シカゴに向かって飛んだのは7月下旬だった。シカゴはライトが活躍した中心地でもある。オーク・パークにあるライトの初期の住宅作品など20数棟を皮切りに、具現
作品437のうちこれから約90プロジェクトを見て回ることになる。